耳に関する後遺障害
交通事故によって耳に後遺障害が残る場合もあります。症状は、聞こえにくい、または聞こえないといった聴力障害(いわゆる難聴)、耳鳴・耳漏や耳の欠損などです。
聴力障害
聴力の検査では、オージオメーター、スピーチオージオメーターを使います。オージオメーターでは、聞こえの程度(音が鳴っているかどうかの聴力)を、スピーチオージオメーターでは、言葉の聞こえ方と言葉として聞き分ける能力(なんと言っているかどうかの聴力)を検査します。検査は3回行われ、検査と検査の間は7日間程度開けて行われ、後遺障害は2、3回目の聞こえの程度を平均して判断されます。
ただ、これは、あくまでも本人の自己申告をもとにした検査なので、場合によっては本人の認識以外で判断するための聴力検査(ABRやSR)が必要になります。ABR検査は、音の刺激による脳の反応を調べ、SR検査は、耳の中にある耳小骨という骨に付いている耳小骨筋が、大音響に反応して収縮するのを利用して、聴力を調べるものです。どちらも、本人の意思が介在せず、聴力の障害を証明するための有力な検査方法です。ただ、いずれの検査方法も実施できるところが限られます。
聴力障害の基準【両耳】
4級 3号
両耳の聴力を全く失ったもの
6級 3号
両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
6級 4号
1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が 40cm 以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
7級 2号
両耳聴力が 40cm 以上の距離では、普通の話声を解することができない程度になったもの
7級 3号
1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が 1m 以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
9級7号
両耳の聴力が1m以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
9級 8号
1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が 1m 以上の距離では普通の話し声を解することが困難である程度になったもの
10級 5号
両耳の聴力が 1m 以上の距離では普通の話し声を解することが困難である程度になったもの
11級 5号
両耳の聴力が 1m 以上の距離では小声を解することができない程度になったもの
聴力障害の基準【片耳】
聴力障害が両方の耳に生じている場合は、片耳ごとに等級認定を行って合算せず両耳の聴力障害として判断されます。
9級 9号
1耳の聴力を全く失ったもの
10級 6号
1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
11級 6号
1耳の聴力が 40cm 以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
14級 3号
1耳の聴力が 1m 以上の距離では小声を解することができない程度になったもの
耳鳴りや耳漏
事故の後から、耳鳴りを生じることもあります。その原因は、まだ医学的に十分に解明されていないものの、耳鳴りも後遺障害になりえます。
認定には、原則、難聴が発生していることが前提となります。ですので、まずはオージオメーターの検査で、難聴の有無を調べなければなりません。
聴覚障害がわかれば、これに加えて耳鳴りの検査に進みます。ピッチマッチ検査は、耳鳴りの音の高さを調べ、ラウドネスバランス検査は、耳鳴りの大きさを調べます。そして、等級認定を申請する際は、これらの検査結果を添付して行います。
一方、耳漏とは、鼓膜に穴が開き、外耳道から分泌物が流れ出す症状を指します。耳漏も、難聴が発生していなければ後遺障害として認定されません。
耳鳴り・耳漏の基準
12級相当
- 難聴を伴い、著しい耳鳴りを常時残すことが他覚的検査により立証可能なもの
- 難聴で、常時耳漏を残すもの
14級相当
- 難聴を伴い、常時耳鳴りを残すもの
- 難聴で、耳漏を残すもの
欠損
耳殻(外に出ている部分の耳)を欠損すると、欠損の度合次第では後遺障害となる可能性があります。一方、耳殻の欠損は、醜状障害にもなり得るので、耳の後遺障害として認定されない場合でも、外貌醜状として認定される可能性もあります。
欠損障害の基準
12級 4号
1耳の耳殻の大部分を欠損したもの
等級認定のために
耳については、耳への外傷だけでなく、頭部への外傷等で、神経を損傷し、聴覚障害や耳鳴り・耳漏が発生してしまう場合もあります。ですので、等級認定のためには、耳鼻科以外にも、神経内科や脳神経外科で診察を受けることが必要な場合もあります。
また、頭部外傷等がなくても、外傷性頸部症候群(いわゆるムチウチ)等で、難聴、耳鳴りが起こる場合もあります。このような場合には、事故と難聴、耳鳴りの関係性が問題になり、それを証明するため、症状発生後直ちに医師に伝えて、カルテ等に症状などの記録を残してもらう必要があります。そして、すぐに症状に合わせた検査ができる医療施設で検査を行う必要があります。
耳の検査は、3回の検査が必要であるなど、他の部位と異なる特徴がありますし、そのための検査が必要と知らない医師も多いです。そのため、被害者の方が、ご自身で必要な検査を調べて、検査をするよう頼む必要があります。また、地方では、検査が可能な医療機関も限られるため、新たな医療機関を探さなくてはならないことも多いです。
当事務所では、事故直後から依頼者の方をサポートし、適切な等級獲得のために、適切なときに、必要な治療、検査をご提案させて頂いております。また、鹿児島県内であれば、どの医療機関に、どのような検査機器が備わっているかもよくわかっています。
事故に遭ってから、耳が聞こえにくくなった、耳鳴りや耳漏がある方は、ぜひ一度当事務所にご相談下さい。