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薬剤による間質性肺炎について

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間質性肺炎とは、肺胞(肺は、直径0.1から0.2mmほどの肺胞と呼ばれる小さな袋が集まってできています。肺胞の壁は毛細血管が網の目のように取り囲んでおり、肺で吸い込んだ空気中の酸素は肺胞の壁から血液中に取り込まれます。)の壁やその周辺に炎症が起こり、血液に酸素が取り込めず、動脈血液中の酸素が減少する結果、呼吸が困難になるという疾病です。進行すると肺線維症(肺が線維化を起こして硬くなってしまった状態)になる場合もあり、このような状態になると日常生活にも支障が出てくる可能性があります。

具体的な症状としては、息切れ(呼吸困難)、空咳(痰のない咳)、発熱があげられます。息切れについては、最初は運動時や階段・坂道を上がるときにみられ、進行すると歩くだけでも息切れを感じるようになります。

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間質性肺炎は、関節リウマチなどの膠原病、アスベストの吸入等、発症の原因が明らかになっているものと、原因不明のものがあります。原因不明の間質性肺炎を特発性間質性肺炎といいます。

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間質性肺炎は、医薬品の副作用として発生することもあります。
医薬品により間質性肺炎が発症した場合、医療過誤が問題になることがあります。

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もっとも、薬剤によって副作用が発生したからといって、そのことだけから、直ちに医療機関医に法的責任が発生するわけではありません。薬剤の服用においては、副作用は避けられないものであるためです。

薬剤の副作用に関して、医師や医療機関に法的責任が生じるのは、当該薬剤の処方に関して、医師に過失(注意義務違反)が認められる場合です。例えば、薬剤の効能に比較して、副作用の健康被害が大きく、さらに当該患者においてその副作用が発生する可能性が高く、一般的な知見をもつ医師ならそのような処方はしないという場合、医師に注意義務違反が認められる可能性が高いでしょう。

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薬剤によって間質性肺炎が発生し、医師や医療機関に法的責任を追及する場合、次の点が大きな争点となります。

まず、そもそも、①患者の間質性肺炎が医療機関によって処方された薬剤によるものかという点です。これは、間質性肺炎が原因不明で発症すること(特発性間質性肺炎)もあるため問題となります。

そして、②間質性肺炎の原因となった薬剤の処方や、間質性肺炎発症後の対応について医療機関に過失(注意義務違反)が認められるかという点です。

これ以外にも、過失と損害との因果関係等、争点になる事項は多々考えられますが、本記事ではこの2点についてご説明します。

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前記2つの争点については、大阪地裁平成26年9月1日判決(判例時報2285号88頁)が参考になります。同判決は、クリニックでアンカロンという薬剤(抗不整脈剤)を処方された患者が間質性肺炎を発症し、死亡したという事案です。

同判決は①患者の間質性肺炎が医療機関によって処方された薬剤によるものかという点について、副作用として間質性肺炎を発症する可能性のある薬剤を患者が継続的に使用していたこと、患者に薬剤性間質性肺炎にり患した際の症状がみられること、患者が薬剤性間質性肺炎のリスク因子を複数もっていたこと、患者の症状が感染症によるものであることが否定されること等を総合考慮して、患者はアンカロンによる薬剤性間質性肺炎を発症したと認定しました。

さらに、医療機関からの、患者の間質性肺炎は、薬剤によるものか特発性間質性肺炎によるものか鑑別できないという主張に対して、同判決は、薬剤性間質性肺炎を発症したことを否定できない複数の医学的根拠を認定し、「特発性間質性肺炎は原因不明の間質性肺炎であって、その診断は、その他の肺疾患を除外した後に特発性間質性肺炎を疑うというものである。したがって、アンカロンによる薬剤性間質性肺炎を除外することができない以上、特発性間質性肺炎と診断することはできない。」として、医療機関の主張を否定しました。

また、同判決は②間質性肺炎の原因となった薬剤の処方や、間質性肺炎発症後の対応について医療機関に過失(注意義務違反)が認められるかという点については、次のように判示して、医療機関の過失を認めています。
「患者は、もともと不整脈の持病があり、発作性心房細動、非持続性心室頻拍及び非持続性上室性頻拍との診断を受け、抗不整脈剤であるサンリズムを投与しても症状の改善が見られず、アンカロンの投与によって症状が改善したのであるから、アンカロンの服用を安易に中止することは相当ではない。しかし、認定事実(一(1))によれば、アンカロンには、上記のような効能がある一方で、副作用として薬剤性間質性肺炎があり、これによって死に至る危険があるから、アンカロンを投与する際には、薬剤性間質性肺炎を発症していないかを把握し、その発症が疑われる場合に投薬を中止する必要性が高い。そのため、アンカロンは、十分な経験のある医師に限り、緊急時にも十分に対応できる施設でのみ使用することとされており、アンカロンを投与する場合は、頻回に患者の状態を観察するとともに、胸部レントゲン検査、臨床検査(血液学的検査、血液生化学的検査、尿検査、甲状腺機能検査)及び眼科検査を投与前、投与開始一か月後、投与中三か月ごとに行うことが望ましいとされている。また、実際にアンカロンを投与する場合にどの程度の検査をすべきであるかは、患者の重症度や経済的な面も含めて施設や患者ごとに決定されるべきであるから、早期のエックス線検査の必要性を示唆する所見がなくても、一年ごとのエックス線検査を行うべきであるとの指摘もある。患者は、前判示のとおり、六五歳を超えた男性であり、平成二〇年一月一六日の時点で肺に異常所見が見られ、肺障害のリスク因子を複数有していたのであるから、被告には、患者に対し、アンカロンを服用している間は、数か月に一度程度、エックス線検査や血液検査などの定期検査を行うとともに、何らかの異常が窺われた時点において上記検査を行うべき義務があったというべきである。そして、認定事実(一(1))によれば、患者は、平成二〇年一二月には咳の症状を訴えており、平成二一年四月八日に被告の診察を受けた際には、階段を上ったり下りたりするときに、呼吸困難を感じる、喉が痛い、咳が出る、歩くときにふらつくといった症状を訴え、薬の減量を求めていたのであるから、被告は、患者に対し、上記両時点において、薬剤性間質性肺炎の副作用が生じていないかを判断するためにエックス線検査等諸検査を行うべきであったと考える。

これに対し、被告は、診察するたびに患者の胸に聴診器を当てて、捻髪音の有無を聴取している場合には、エックス線検査などの検査を行う必要はないと主張し、被告本人もこれに沿う供述をする。

しかし、証拠(鑑定の結果)によれば、間質性肺炎一般において捻髪音を聴取しないこともあり、アンカロン内服中は、肺障害が発症していない状態でも肺の間質に変化が起きている可能性があるとの考察もされている。そうすると、聴診器を当てて、捻髪音の有無を確認していたとしても間質性肺炎を発見することができない場合があるから、致死的な副作用を有するアンカロンを投与している間の診察において、捻髪音があるか否かを聴取するのみでは十分であるとはいえない。

以上のとおり、被告は、平成二〇年一月一六日に、胸部レントゲン検査を実施した他、患者に対して、聴診器で呼吸音を聴取する以外に胸部レントゲン検査などの検査を実施していなかったのであるから、上記義務に違反したことは明らかである。」

同判決は、前記①、②の争点ともに、患者側の主張を認め、医療機関の法的責任を認めました。その結果、裁判所は、医療機関に対し、慰謝料等1800万円以上の賠償を命じています。

※同判決では、本記事でご説明した争点以外にも、複数の争点(過失と死亡との因果関係等)が問題となっています。

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薬剤による間質性肺炎の事案すべてに、前記の大阪地裁平成26年9月1日判決が当てはまるわけではありませんが、一つの参考にはなるはずです。

薬剤による間質性肺炎が疑われる場合、副作用の可能性もありますが、過誤のケースもあり得るのです。間質性肺炎は、後遺障害として残存する可能性が高く、適正な補償を受けなければその後の生活に支障が出ることも少なくありません。

弁護士法人グレイスでは、顧問医と協力し、薬剤による間質性肺炎なのか、薬剤の処方に注意義務違反があったのか、医学的見地、法的見地から緻密に調査します。この調査は、第3者的な立場から法的請求が可能か調べるもので、お任せいただく時点で、医療過誤か確定している必要はありません。

過誤があったのか確信が持てないという方も、ぜひお気軽にご相談ください。

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