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道路での転倒等と損害賠償

1 自転車需要と自転車事故の増加

最近では、健康志向の高まりや、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防対策などの理由から、ますます自転車の需要が高まっています。日常生活においては家庭用の電動自転車の普及も著しく、他方で趣味の世界としては、ロードバイク等のスポーツ用自転車に乗る方、また、仕事として、例えば、デリバリー食品の配達員として自転車に乗る方も増えてきています。

このように日常生活の足や趣味だけでなく、通勤や業務のため等多種多様な理由での自転車需要の増加に伴い、一時、自転車事故件数も増加を続けた時期もありました。近年は自転車事故に関する警察等の啓蒙活動が功を奏したのか、事故件数自体は減少傾向に転じ始めてはいるものの、それでもなお、当事務所への自転車事故の相談件数は増加傾向にあります。

そこで、本コラムでは、自転車事故と損害賠償請求について解説をしてみたいと思います。

2 自転車事故と損害賠償

まず、自転車事故が発生した場合、損害賠償請求はどのようになるでしょうか?

例えば、自転車と自動車の同士の衝突事故で、自転車の運転者が負傷した場合、怪我をさせた自動車の運転者は、負傷した被害者に対し、治療費等の損害を賠償しなければなりません。また、自転車と歩行者との接触事故で、歩行者が負傷した場合は、自転車の運転者は歩行者に対し治療費等の損害を賠償しなくてはなりません。

最近は、自転車と歩行者の事故で、歩行者が亡くなられたり、重度の後遺障害が残存するなどして、自転車の運転者が高額の賠償責任を負う裁判例も見かけます。実際、警察庁の調査によれば、自転車関連死亡・重症事故の件数は平成30年には8,660件にものぼっており、また、その約40パーセントが65歳以上の方の事故とされています。

自転車は、老若男女が手軽に利用できる便利で快適な交通手段と言えど、ひとたび事故を起こせば重い責任を負うこともありますので、安全面には注意をして利用したいものです。

3 道路の管理瑕疵による転倒等と損害賠償

ところで、自転車で凹凸のある道路上を走行した際にタイヤが道路の凹凸部分にはまってしまったという経験はないでしょうか?

もし、そのまま転倒してしまい、怪我をしたという場合、だれかに対して治療費等の損害の賠償請求が可能なのでしょうか?

それとも単なる自損事故として全て本人の自己負担となるのでしょうか?

個別のケース毎に判断が必要ですが、必ずしも全てのケースにおいて自己責任となるわけではなく、凹凸のあった道路を管理する国や地方公共団体に対して、道路の管理に問題があったことを理由に損害賠償を請求することが可能な場合もあります。

以下、詳しく解説します。

(1)道路管理責任と国家賠償法

ア 国家賠償法2条1項

この点、道路を管理する国または公共団体が責任を負う場面について、国家賠償法は2条1項において、以下のように定めています。

道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。

したがって、国または地方公共団体が管理する道路の管理に「瑕疵」があったため、自転車乗車中に事故を起こし怪我をした場合には、当該道路を管理する国または地方公共団体に対して治療費等の損害賠償を請求できるということになります。

イ 道路管理の「瑕疵」

では、道路の管理に「瑕疵」があったとは、どのような場合を指すのでしょうか?

この点、過去の判例においては、「瑕疵」とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いている状態をいうと解されています。

そこで、道路に凹凸があったことが、道路が通常有すべき安全性を欠いている状態といえれば、道路の管理に「瑕疵」があったと認められるということになります。

なお、営造物が通常有すべき安全性を有しているかどうかは、当該営造物の構造、用法、場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合的に考慮の上、具体的個別的に判断されると解されています。

(2)道路の管理瑕疵を認めた裁判例

それでは、実際に道路の管理「瑕疵」が認められたケースをいくつかご紹介します。

ア グレーチング間の隙間

まず、道路上のグレーチングの溝にタイヤがはまり、転倒し怪我をしたとして、損害賠償を請求した事例があります(大阪地方裁判所堺支部平元年1月31日判決)。

グレーチングとは、側溝に設置されている格子状の鉄の蓋ですが、このケースでは、グレーチングとグレーチングの間に4.2センチメートルの隙間があいてしまっており、そこにちょうど自転車のタイヤがはまってしまったようです。裁判所は、この隙間があったことが、道路の管理上の「瑕疵」にあたると判断し、当該道路を管理する地方公共団体の賠償責任を認めています。

イ 道路上の窪み

同じくロードバイクの事例ですが、道路の左端から1メートルの個所に存在した、長さ95センチメートル、最大幅41センチメートル、最大深さ6.4センチメートルの窪みにロードバイクのタイヤがとられて転倒して怪我をしてしまったため、道路を管理していた兵庫県に対して損害賠償請求訴訟が提起されたものがあります(神戸地方裁判所平成24年3月13日判決)

この事例において、裁判所は、道路が通常有すべき安全性を欠いていたとして、道路の管理の「瑕疵」の存在を認定し、道路管理者である兵庫県の責任を認めました。

しかし、同時に、裁判所は、事故が起きた原因は、道路に窪みがあったという道路の管理瑕疵だけにあるのではなく、自転車の運転者が前方注意して見ていれば道路上の窪みの存在に気がついたはずだが前方不注意があったとし、自転車の運転者の過失割合を5割と認定し、過失相殺をしています。

このように、道路の管理「瑕疵」が認められたとしても、自転車の運転手側にも事故を起こしたことについての過失があれば、過失相殺がなされることになります。

ウ 路肩の隙間

最後に、路肩の事故のケースですが、片側2車線の直線道路において、歩道と車道の間の路肩部分に長さ数十メートル、幅約2センチメートルの隙間が空いており、自転車で路肩を走行中、前輪がこの隙間にはさまり、転倒し怪我を負ったというケース(岡山地方裁判所平成30年4月24日判決)があります。この事例において、裁判所は、車道外側線の外側から隙間まで20センチメートル未満の幅しかないことなどから、自転車が路肩を走行することは十分想定できたにもかかわらず、そのような隙間があったことは道路設置、管理の「瑕疵」に当たるとし、損害賠償請求を認めています。

もっとも、このケースにおいても、路肩走行時に注意深く観察をすれば隙間にタイヤがはまり込むことを認識できたとして、自転車の運転手に3割の過失責任を認め、過失相殺がなされています。

4 まとめ

このように、自転車の自損事故で怪我をした場合であっても、事故の原因となった道路上の欠陥について、当該道路を管理する国又は地方公共団体の管理の「瑕疵」が認められる場合には、国又は当該地方公共団体に対して、被った損害につき賠償請求をすることができます。ですので、かならずしも全ての自損事故のケースにおいて、誰にも損害賠償を請求をできないというわけではないということです。

請求が認められるか否かのポイントは、道路の管理「瑕疵」が認められるかどうかですが、注意が必要なのは、例えば、道路上に穴があいていたとして、その穴の大きさが何センチメートル以上の場合には瑕疵が認められるとか、グレーチングの隙間が何センチメートル以上の場合には瑕疵が認められる、というように、瑕疵の存否判断について明確な基準があるわけではないことです。結局は、個別のケース毎に、上述のような基準に基づき具体的な事情を加味して法的な評価としてどうかという点を判断をする必要があります。

そのため、自転車で走行中に道路上に凸凹があったり溝があったために転倒し、怪我をしたという場合は、法律の専門家である弁護士に相談し、その凸凹等が瑕疵に当たるかアドバイスを求めた上で、場合によっては、その後の損害賠償請求に関する交渉や裁判に関する業務を依頼した方が良いといえます。

特に、転倒事故により負傷し後遺症が残った場合には別の問題が出てきます。後遺症に関して損害賠償を請求する場合には、その後遺症の程度も問題になってきますが、交通事故事件の場合は、自賠責保険が後遺障害等級を認定してくれますが、道路上で自転車で転倒した事故では、後遺障害等級を認定してくれる機関はありません。そのため、交渉や裁判においては、診療録等の医学的資料から、どの程度の後遺症が残存しているかということを立証していかなくてはなりません。

当事務所は、交通事故の被害者側代理人として培った後遺症立証のノウハウを多く有しています。自転車で転倒して負傷したという場合は、ぜひ当事務所にご相談ください。

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