2021年11月25日
2024年6月25日
私は、今年4月に検察官から弁護士に転職し、現在は事故・傷害部に所属しています。
検察官時代に多く取り扱った事案の一つに、ひき逃げがあります。ひき逃げは、道路交通法上、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金という重い刑罰が定められています。
ひき逃げについて、多くの方が思い浮かべるのは、人身事故を起こしたのにそのまま走り去った事案でしょう。
では、次の事案はひき逃げでしょうか。
①車を運転中に何かに衝突し、頭が真っ白になって走り去った後、やっぱり人かもしれないと思い直し、数分後に事故現場に戻った。
②車を運転中、脇道から飛び出してきた小学生の自転車に衝突して転倒させたが、小学生が「大丈夫」といって走り去ったので、大丈夫だろうと思い帰宅した。
③自転車で走行中、対向してきた自転車に衝突し、双方が転倒したが、大したけがはなさそうなので警察に届け出ないことにし、連絡先を交換して別れた。
答えは、いずれも「ひき逃げになり得る」です。なお、ひき逃げは正確には、けがをしているかもしれない相手を助けなかったという不救護罪と、警察に連絡をしなかったという不申告罪を併せた犯罪です。では、事案を見てみましょう。
①の場合は、事故の数分後に現場に戻っている点
②の場合は、事故の主な原因が相手にあり、相手が大丈夫と言っている点
③の場合は、自転車事故であることや、警察に通報しないことに同意して連絡先も交換している点
が、判断に迷う点かもしれません。しかし法律上は、これらの事情はほぼ関係ありません。事故が起きたときは警察に連絡しなければなりませんし、無傷であることが明らかでない限りは、救急車を呼ばなければなりません。なお、事故により、ムチウチといった目に見えない症状が出ることはよく知られていることなので、基本的には救急車を呼んでおいた方がいいでしょう。
ひき逃げと認定されると、罪は格段に重くなります。逃げなければ軽微な事案として刑罰を受けなかった可能性があったのに、逃げたために刑罰を受けることもよくあります。
事故を起こすと怖くなり、とっさに逃げてしまおうと思う人も多いようです。しかし最近は、ドライブレコーダーや防犯カメラから、事故を起こした車のナンバーが判明することも多く、逃げ切ることは難しいでしょう。事故を起こしたときはすぐに警察に連絡し、救急車を呼ぶことを、平時から念頭に置いていただきたいと思います。