事案
【属性】
性 別 女性
年 齢 60代
子 供 あり(ただし成人)
職業(依頼者) パート・アルバイト
職業(相手方) 無職(定年退職)
婚姻期間 30年以上
争 点 離婚、財産分与(預貯金、不動産、退職金)
手 続 判決
地 域 (鹿児島)
【事案の概要】
婚姻期間中、夫に依頼者に対して人格を否定するような暴言や、子供に対して「しつけ」と称して暴力を振るうことが多かった。相談時は、いまだ夫と同居していたものの、夫が怖くて離婚を考えていることを言えない。とりあえず別居を開始したいが、どのようにスタートすれば良いのか分からない。また別居後、夫のモラハラがさらにエスカレートする心配があるので、最初から弁護士に間に入っていただきたい。
以上のような経緯でご相談・ご依頼となりました。
【モラハラの内容】
・「バカ女」などといった人格を否定する内容の暴言
・家事の不出来の指摘
・依頼者実母に対する抗議の電話
解決
【解決までの流れ】
1.依頼直後の対応
ご依頼直後より、別居を開始されました。
直ちに弁護士が介入し、当事者間で直接のやり取りができないようにしました。
当初は、裁判所外で離婚の交渉を開始しましたが、夫が離婚に強く反対していた為、協議での早期解決は困難でした。その結果、直ちに離婚調停と婚姻費用分担請求調停を申し立てることとなりました。
2.調停段階の対応
夫が依頼者に支払うべき婚姻費用の金額は早期に合意に至りましたが、離婚の合意に至らず、離婚調停は不成立となりました。
以上の経緯を踏まえ、離婚訴訟を提起するに至りました。
3.訴訟段階の対応
訴訟においても夫は一貫して離婚を拒否した為、和解の成立は困難となり、判決での判断となりました。第一審口頭弁論終結時点で別居期間が2年弱と決して長くなかった為、判決で離婚が認められるか否かは微妙なところでした。
しかし、尋問手続で夫のモラハラの事実が一定程度認められたことや、夫が「でていけ」と言ったことを踏まえて別居が開始されていることに鑑み、判決で離婚が認められる結論となりました。夫は本判決に対して控訴したものの、高等裁判所でも離婚を認める判決が維持され、離婚成立となりました。
4.財産分与
夫が自宅不動産の取得を希望したこともあり、相談者は代わりに預貯金1000万円を獲得することができました。
【弁護士の視点】
「モラハラ」という言葉はとても抽象的な言葉です。その為、単にモラハラがあったというだけで裁判所が離婚を認める旨の判決を出すことは稀です。
不貞行為のような明確な法律上の離婚原因(民法770条1項1号乃至4号)が無い場合、判決で離婚を認めてもらう為には「婚姻を継続し難い重大な事由」(同項5号)について主張・立証する必要があります。「モラハラ」の具体的な中身は何なのか。暴言なのか、無視なのかを明確にし、可能な限り証拠を準備します。また、モラハラのみで離婚が認められにくい場合に備え、早期に別居を開始します。一般的に明確な法律上の離婚原因が無い場合、一定期間別居が継続されると離婚が認められる傾向にあります。具体的に離婚が認められる為に必要な別居期間が法律上決められている分けではありませんが3年から5年程度というケースが多い印象があります。
本件では、第一審口頭弁論終結時点で別居期間が2年弱と決して長くはありませんでしたが、尋問手続でモラハラの事実が認められたことも考慮して離婚の判決が出されたという点で大きな成功を収めた事例です。