目次
モラハラが子どもに与える影響
モラハラの特徴
モラルハラスメントとは、言葉や態度によって、相手の人格を継続的に傷つけ、その苦痛や恐怖によって相手を支配し、思い通りに操る精神的な暴力のことをいいます。
たとえば、夫がモラハラ加害者である場合、モラハラ夫は、妻に対して「お前が悪い!」と責めたり「そんなことも分からないのか」とバカにしたり、あるいは、言葉だけではなく態度によっても、妻を執拗に責め、痛めつけます。
このようにして、モラハラ夫は妻に対する支配を確立していくのです。
モラハラ夫がこのような言動に出る背景には「相手を絶対的に支配することによって、常に優越感を感じていたい」というモラハラ加害者に特徴的な欲求があるといわれています。
このような優越感への強い欲求があるため、モラハラ加害者は、ときに、子どもでさえも、モラハラに利用することがあります。子どもの目の前で、被害者をバカにしたり、一緒に被害者をいじめることを強要したりするのです。
さらに、モラハラ加害者は、子ども自身をモラハラのターゲットにすることもあります。
子どものために我慢する?
モラハラ夫の被害を受けている方の中には「子どものため」という理由で、別居や離婚など、モラハラ夫に対抗する行動をとることを躊躇される方が多くいらっしゃいます。
しかし、そのようにしてモラハラ夫との生活をつづけていくことは、本当に「子どものため」といえるのでしょうか?
モラハラ家庭で育つ子どもは安心できない
「父親が、母親を、言葉や態度によって傷つけ、その人格や自尊心を奪っていく」
モラハラ夫のいる家庭で育つ子どもは、常に、その様子を目撃することになります。
そのことによって、子どもが傷つき、深い悲しみや苦痛を感じることは、言うまでもありません。
子どもは、家庭において、仲の良い両親のもと、愛情に包まれ、安心感をもって育ってこそ、心身ともに健やかに成長することができます。
しかし、モラハラ夫がいる家庭において、子どもは、自分の大切な家族である父親が、やはり自分にとって大切な家族である母親を苦しめている、そのことを目の当たりにします。
父親の言動に傷つき、悩みながらも、なす術のない母親の姿を、見つづけることになるのです。
このような家庭で育つ子どもが、安心感をもって過ごせるはずがありません。
モラハラ家庭に育つ子どもは、次第に、親の様子や顔色を伺うようになっていくこともあります。両親の様子を、常に、びくびくしながら、気にかけるようになるのです。
モラハラ家庭で育つ子どもは、家庭内で安心することができず、常に不安を抱えていることを強いられてしまうのです。
子ども自身がモラハラ被害者になることも
モラハラ家庭において、子どもが受ける被害は、両親の間で繰り広げられるモラハラ行為を目撃することにとどまりません。
モラハラ夫は、妻を支配し、思い通りに操るために、子どもまで利用しようとすることがあります。
父親が、子どもに対して、母親(妻)の悪口をふきこむ
父親が、子どもに、自分と一緒に、母親(妻)をバカにし、いじめることを強要する
などがその典型です。
さらに、モラハラ夫にとって大切なのは、相手を支配し、自分の優位を保てる環境を維持すること。
そんなモラハラ夫は、子どもが成長し、自己主張ができる年齢になると、子ども自身をモラハラの直接のターゲットにすることもあります。
妻に対するのと同じように、子どもに対しても「お前はバカだ」「お前が悪い」などと、子どもの人格を否定し、支配しようとするのです。
子どもの脳へダメージを与えるリスク
モラハラ家庭で育つことは、子どもの心身の成長に深刻な影響を与えます。
その影響は、一時的に子どもの心を傷つけるということだけでなく
子どもの「脳」にまで深刻な影響を与えることが明らかになっています。
成長した大人の場合でも、過度のストレスに晒された場合、脳がダメージを受けることが知られていますが、このことは、子どもにとっても同様です。
子どもが、暴力や暴言、無視、放置、威嚇、罵倒など、過度のストレスに晒されつづけた場合、子どもの脳に物理的な変化が起きることが報告されています。
それらの不適切な行為によって、子どもの心が深く傷つき、その結果、脳が物理的に変形してしまうのです。
モラハラ家庭に育つ子どもは、まさに、このような過度のストレスに晒されつづけるため、脳にダメージを負ってしまう可能性があります。
そして、脳へのダメージはその後、学習意欲の低下、記憶力の低下や非行、うつまでをも引き起こすといわれています。
成人した大人ですら、過度なストレスに晒されることによって、脳にダメージを受けるのですから、心身ともに未成熟な子どもがストレスに晒された場合、脳へのダメージがより深刻になってしまうことは、脳の専門家でない私たちにも、容易に想像することができます。
このように、モラハラ家庭で子どもを養育することによって、子どもの大切な脳に深刻なダメージを与えてしまう可能性があるのです。
モラハラの連鎖
モラハラが子どもに与える影響として、子ども自身の心身を傷つけ、ダメージを与えてしまうということのほかに「モラハラの連鎖」という問題があります。
子どもは、家庭において、一番身近な存在である親の姿、行動を見て、それを規範として学んでいきます。
それでは、モラハラ家庭に育つ子どもは、両親の間で行われるモラハラを日常的に目撃することによって、一体、どのようなことを学んでいくでしょうか?
まず、モラハラ家庭に育つ子どもが、モラハラ加害者に同調する場合があります。
被害者に対して、執拗に人格を否定し、尊厳を奪う行為を繰り返す加害者に同調した子どもは、自分が優位に立ち、人を支配するためには、精神的な暴力という手段を使ってもよいのだと考えるようになります。
このような子どもは、暴力によって友達より優位に立とうとするかもしれません。
成長の過程で、軌道修正される機会がなければ、相手を傷つけることを意に介さない、思いやりのない大人になってしまう可能性もあるでしょう。
また、モラハラ家庭に育つ子どもが、モラハラ被害者に同調する場合もあります。
モラハラ加害者からの執拗な攻撃に、なす術もなく、ひたすら耐えつづける被害者の姿に同調した子どもは、家庭の平穏のためには、暴力を受け入れ、耐えなければならないということを学んでしまう可能性があります。
暴力に対して、抵抗することはできないのだという価値観を取り入れてしまうのです。
このように被害者に同調した子どもは、大人になっても、無力感をもちつづけ、低い自己評価により、何に対しても無気力になってしまう可能性もあります。
モラハラ被害を受けている方の中には「子どものために」その環境から抜け出せないという方が多くいらっしゃいます。
自分がモラハラ加害者から逃れ、離婚などの道を選ぶことは、子どもにとって不幸なことだと考えていらっしゃるのです。
しかし、モラハラが子どもに与える影響をふまえれば、決してそうではないことに気づかれるのではないでしょうか。
「暴力」のある場所では、自分の暴力も正当化されてしまいます。
モラハラ家庭の「暴力」を黙認して、放置することは、子どもに対して「暴力は正しいこと」という間違ったメッセージを送ることでもあるのです。
このように、親から子どもへと「暴力」そのもの、または、これを肯定する考え方が引き継がれてしまうことは「暴力の世代間連鎖」といわれています。
モラハラ家庭においても、モラハラの連鎖が起こる可能性があります。
「親のようになりたくない」と望んでいても、結果として、モラハラのある環境を選んでしまったり、自分がモラハラ家庭を築いてしまったり・・ということになる傾向があるのです。
子どものために、このようなことは、絶対に阻止しなければなりません。
モラハラを熟知した弁護士に相談を
近年、ご相談件数が急増している「モラハラ」ですが「モラハラ」に対する裁判所や調停委員の理解が進んでいるかというと、残念ながら、まだまだ不十分であるというのが正直なところです。
それでは、弁護士はどうかといいますと「モラハラ」という被害に関心をもち、モラハラ被害者の力になりたいと積極的に取り組んでいる弁護士と、それ以外の弁護士との間で、差が大きいというのが実情ではないかと思います。
モラハラのご相談を受ける場合、何より重要なのは「モラハラ」が「暴力」であるということをしっかり認識していることです。
「なぜ、モラハラが起こってしまうのか」
「なぜ、モラハラ被害者が家庭から逃げ出せないのか」
そして
「モラハラが子どもに一体どんな影響を与えるのか」
というモラハラの本質やその影響を十分に理解している弁護士であれば、被害者の方が懸念されるお子さんのことを含め、きちんとご納得のいく説明をさしあげて、正しい方向へと導くことができます。
モラハラに悩んでいる、そして、お子さんのことが心配という方は
ぜひ、モラハラを熟知した弁護士にご相談ください。