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 運転中に運転手が突然意識を喪失して交通事故を起こすということが、たびたび報道されています。
 2021年1月にも東京都内で、タクシー運転手がくも膜下出血を起こし、複数の歩行者を撥ねてそのうちの1人が亡くなるという痛ましい事故が発生しており、事故直前に運転手が意識を喪失していた可能性が指摘されています。

 このような事故に巻き込まれた被害者は、加害者側から損害賠償を受けることができるのでしょうか。
 この場合、原則として運転手は損害賠償の責任を負わないというのが、民法の考え方です。
 このことを示したのが民法713条本文であり、「精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、その賠償の責任を負わない。」とされています。
しかし、服薬を怠るなどの落ち度により意識を失った場合には、損害賠償請求が認められる場合があります。民法713条には但し書きとして、「ただし、故意又は過失によって一時的にその状態を招いたときは、この限りでない。」とされているからです。

 では、そのような落ち度がなかった場合、損害賠償を受けることはできないのでしょうか。
ここで、自動車損害賠償保障法という法律を見てみます。
この法律3条には、運行供用者の責任が定められています。「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。」というのがそれです。
 この「自己のために自動車を運行の用に供する者」を運行供用者といい、車の所有者がその典型例です。
 自賠法にも民法の適用があるので、意識喪失中の事故については、上記のように免責されそうですが、自賠法には民法713条の適用は無いと考えられていますし、同趣旨の裁判例も存在します(大阪地裁平成17年2月14日判決等。)。
 したがって、自分の車を運転中に意識喪失に陥った場合など、運転手が運行供用者に当たる場合には、この法律3条によって運転手に損害賠償責任を問うことができます。
 なお、運転していた車が会社の所有車であった場合には、会社側に運行供用者責任を問うことができます。

 加害者が意識喪失を理由に損害賠償をしないと主張してくる場合でも、泣き寝入りする必要はありません。一度弁護士に相談してみてください。